0人が本棚に入れています
本棚に追加
狼記物語Ⅱ-2
次の日の昼過ぎ。雨がやっと止み、青年と翔狼は森を抜けようとしていた。
「…お前、どこまで付きまとうつもりだ?」
青年が苛ついた口調で言った。青年の後ろにはくっつくようにして翔狼がいた。
青年と違って翔狼はにこにこして、呑気に鼻歌を歌ったりなんかもしている。
「どこまでも。話してくれるまでね」
はぁ、と青年は何回目か分からない溜め息をつき、ちらっと後ろの翔狼を睨んだ。
翔狼は、ふわふわと飛んでいる白と青の羽の蝶を目で追うのに一生懸命だった。
青年はそれを良いことに、さっと木々の間を縫うように姿を消した。
「…あれ?」
翔狼が気づいたときにはもう、青年の姿は近くになかった。
最初のコメントを投稿しよう!