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どこまでも続くかと思われた廊下は、唐突に終わりを告げる。
「こちらでお待ち下さい」
案内人は黙礼を残して退く。
どこへ行くのかと思えば、背後から高い電子音が鳴った。
廊下の一角にカードリーダーでもあるのだろうか。
初見で気が付かなかったということは、壁に擬態でもしてあるに違いない。
ご丁寧な事だ。
背後の案内人はこの先の人物と連絡を取っているようだった。
会話を聞かせないため、電子盤での暗号を使ったやり取りだ。
厳重なセキュリティー。
過剰な警戒心。
これから戦争を起こそうともなれば、それも当然の対応かもしれない。
後ろのやり取りがあまりにも静かなので、だだっ広い空間に一人きりであるような気分になる。
だからと言って気を抜くつもりはない。
案内人が見ていなくとも、どうせ何処かで監視カメラが動いているに決まっているのだから。
それにしても、と視線を巡らせた。
白い床、白い壁、白い天井……。
廊下から続くこの光景には、全くもって気が滅入る。
恐らく、入り口から此処に至るまでの距離感を掴ませないためだろう。
正直、此方としては廊下の長さなどどうでもいい。
それと、若干のマインドコントロール。
寧ろ、厄介なのはこちらだ。
今歩いてきた廊下のようになんの変化もない光景は、かえって不安を煽る。
加えて、窓一つ無い閉塞感。
そのからくりを知っていても、相手の思惑通りの感覚を懐いてしまう。
だから、呑まれるな。
顎を引いて前を見据えると、これまた白い扉である。
直前の心意気も霞み、思わず溜め息を吐いた。
嗚呼、障子と畳が懐かしい。襖や板の間でも構わない。
これが同じ日本だとは……。
「準備が整いました。どうぞお入り下さい」
待ちに待った言葉に、我知らず微笑む。
ようやく、だ。
あの悲劇。あの無念。あの約束。
それを、ようやく清算する時が来た。
「さて、行こうか」
――変えられるよ。
「……うん、そうだね」
吐息にも似た微かな声で、記憶の中の彼女に返事を返す。
あの時は、そんなことは不可能だと決めつけていた。
それが今、こうして此処に居る。
白一色の扉がゆっくり開く。
その先にあるものは、まだ見ぬ未来。
――これから変える、未来だ。
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