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翔狼の同行が決まってから数日が過ぎた。
二人はとある町の宿にいた。お世辞にも治安が良いとは言えない荒れた町だった。
通りや広場には家も金もない者や、どこからか逃げ延びてきた難民達が溜まっていた。
宿の値段からして統治者だけがやたら裕福なのがよく分かる。
珀狼と翔狼が町へ入り、宿を探しているときも光にたかる蛾のごとく物乞いが集まってきた。
翔狼は夕方、人が減るのを見計らって買い物へ出た。
帰り道、細い脇道から一人の男が真っ青な顔をして飛び出してきたのとぶつかった。
「た、助けてくれぇ!」
男は翔狼の顔を見るなり半べそで縋ってきた。
「え、どうしたんですか?」
「し、し、死神が…」
「は?」
翔狼はぽかんとした。死神なんて、神すら居るかどうか怪しいのに…どう考えても大反れた勘違いだ。
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