0人が本棚に入れています
本棚に追加
「…そ、う…。」
少年はうなだれながら言葉を 絞り出した。
「何で貴方が…悲しい顔を、 するの?」
「…君が…あまりに急いでる からだよ。」
「行きたい場所に急ぐのは… 当然じゃない」
「…そっか。」
少年は床に降り、血で染まっ た剣を再び手に取った。
そして、ベットに膝を立て、 切っ先の照準を少女の心臓に 構えた。
少年の頬を血の混じった涙が 伝う。
「本当に…良いの」
「早く、殺して」
その言葉は命令に似た、冷た い声色だった。
彼女の決心が手の平に籠もっ たかのように、剣の先が浅く 皮膚に沈む。
そして少女は無垢に笑いなが ら、
「ありがとう…そして永遠に さようなら」
最後の言葉を聞き届け、彼は 彼女の心臓を剣で貫いた。
彼女の鼓動が止まっても、彼 はぎゅっとその手を握ってい た。
まるでほのかに残る温もりを 、いつまでも無くすまいとす るかのように。
.
最初のコメントを投稿しよう!