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血に飾られた少女を、彼は連 れ出さなかった。
変わりに傍らの花瓶から、白 い花を取り彼女の髪に添えて、
握っていた手の甲にキスを落 とした。
「おやすみなさい、お姫様」
涙はいつの間にか枯れていた。
───…
重い扉を開け暗い屋敷から出 ると、真っ直ぐな朝日が眼に 飛び込んできた。
また1日が始まった。
『腹減った。』
ほら、何も変わらない日常が 顔を覗かせる。
少年は血に染まった剣をカラ ンと地面に落とし、目の前の 坂を駆けていった。
真っ赤な剣の隙間から、陽光 が反射した。
光はどこまでも真っ直ぐに、 どこまでも遠くに。
それはまるで、未だにどこか 純粋な少年の心のようだった。
お話は此処で終わり。
ある時代の、ある場所の
淡く悲しい恋の物語──…
*THE END*
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