カルマの坂

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 動かなくなった肉の塊は、地  響きと共に倒れた。  同時に血が顔に跳ね返るのだ  が、そんな事を気にもせず、  少年はベットの上に居るであ  ろう少女の元に駆け寄った。  「ねぇ!!君大丈…夫…?」  ベットの上はそれはもう言い  表せないような光景だった。  ベットシーツの上には赤いシ  ミがぽつぽつと並び、彼女は  その中に仰向けで横たわって  いた。  「‥だぁれ…?」  彼女の口元から発せられた声  は弱々しく、生気を纏ってい  なく、  あの見事な双眼は虚ろで涙を  流し、首には首輪がはめられ  ていた。  少年は心のどこかで手遅れか  もしれないと感じた。  「誰でもいぃわ…。ねぇ、小  さな兵隊さん。その剣、私に  くださらない…?」  「え…?」  「もぅ、死にたいの。」   ドクン  少女を見た時とは違う、胸の  鼓動。  悪寒を伴う物だった。  泣きそうな少年とは逆に、少  女はふわりと柔らかく笑った。  「くれないならば、貴方がそ  の手で終わらせて…?」   ドクン  ほら、また  「…どうしても、死に、たい  の…?」  「ええ…それだけが、私の願  いなの。」  「……いいよ、俺がやる。」  「ありがとう。」  少年にはもうこの会話の違和  感が解らなくなっていた。  彼女の言葉が正しいとさえ思  えてくる。  俺が最後に殺すのは、彼女だ。 .
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