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…だが、
「…俺が君の願いを叶える代 わりに、俺の願い、叶えてく れない?」
「なぁに?」
せめて、この、美しい命は…
「何が…良い?貴方の玩具? それともこの髪や眼を…売る ?高くつくと思うわ」
汚れたまま枯らせるものか。
彼は片膝をつき、畏まって、
「口付けをさせてください。」
少年の口から発せられた一言 に、彼女は言葉を呑んだ。
彼ははただ真っ直ぐに彼女を 見つめた。
「…そんな事…?」
「俺にとっては、たった1つ の願い事だ。」
「…わかったわ。」
承諾を得ると、彼はベットに あがり、血で染まった剣を床 に転がし、彼女に覆い被さっ た。
そしてゆっくりと顔を近づけ 、そっと唇を重ねた。
まさに永遠の時間。
人形のような少女から、初め て温もりを感じた瞬間だった。
ゆっくりと腕に力を込め、唇 を離す。
「…ありがとう。」
「…此方こそ。貴方って…温 かいのね。」
「他の人間だって温かい奴は 沢山居るさ。」
「そうね…。」
まるで、生きる希望を見つけ たかのような口振り。
彼の顔に一瞬の希望が浮かん だ、が……
「……でも、」
嗚呼…
「私は、行くわ…もっと暖か い場所に。」
なんと無情な事だろう。
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