0人が本棚に入れています
本棚に追加
『夏の夜は、いつも2人でいたね』
僕は現在、夏の星空をみあげながら思いだしていた。僕の知らない"まち"に消えていった君に、
現在こそ伝えたいことがある。
「ったく、いつも暑苦しいわね…これじゃあ勉強にならないじゃない」 亜沙がいつもの通り、姑みたいに言う。
「自然の風がいーの」 そのとたん頭をたたかれる。「いてーなー」 僕はたたかれた頭をさすりながら亜沙をにらむ。 「そんなこと言ってないわよ。汚いっていってるの!すこしは片付けたら?こんな部屋じゃ、頭、回らないわよ!」
「悪かったなぁ…」 「ハイ!お弁当。いつもカップラーメンばっかり食べてるんだから、ごちそうでしょ!」
亜沙は僕にお弁当箱を手渡す。
「ありがとう」 僕は、窓をあけている亜沙に言う。
「ずっと勉強してるんでしょ?…ちょっと休んだら?身体…こわしちゃうわよ…」後ろ姿がせつない… 「亜沙…」
僕は呟いた。
「ん…?」
亜沙は、振り返らずに答えた。
「どこか行く?」
夏の風になびくすこし茶色がかった亜沙の髪が僕にはせつなかった。
最初のコメントを投稿しよう!