黒澤(くろさわ)編

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「眠ったら…?」 優しい声で亜沙が言う。 「亜沙…」 「部屋片付けとく」 「…ごめん…亜沙…」 僕は、亜沙を抱きしめた。 「どうしてあやまるの?…私は、こうして一緒にいられるだけで幸せなのよ」 亜沙は、いつだってそばにいて、やさしかった… 亜沙は、いつも書き置きを残していった。 僕は、いつもひとり亜沙がおいていったお弁当を食べる。 2人で夜をみることなんてなかった。 夕焼けすら見つめなかった。僕は、なにをみていたのだろう… 亜沙とは、高校2年生の時に知りあった。 いつも元気な亜沙に、ひっぱられながら、ぎこちない恋愛は、はじまった。 僕は、夏が好きだった。 セミの声も、 ひぐらしの涼しい声も、 夕陽も、 波も、 太陽も 果てしなさも 淋しさも みかん色も、 ―――――夏が、そのまま好きだった。 【亜沙もどこかで同じ星をみていますように…】 頬をぬらす涙… 僕は、淋しかった。 ビールを一気に飲む。 僕は、勉強が嫌いだ。 なんだか、きゅうくつで…
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