帝国都市

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 帝国都市、グランド・セラ。  数多の帝国軍人を輩出し、ラナ・テュールの要ともなる中心都市である。  リィナ=リグレイハは軍基地内の図書館で頭を悩ませていた。  青く美しい長い髪は、やや癖があり、ポニーテールにしてある。  頼りなさそうな表情を浮かべてはいるものの、正規軍服を着ていることから軍人であることには変わりないのだが…。 「あ~、駄目。どれもピンとこない」  頭を掻き毟り、リィナは深い溜め息を吐いた。 「リグレイハ少尉!」 「は、はい! ――…あっ、ゴードン中佐」  中年男の太く大きな声を発する体の大きな男、マクバレイ=ゴードンにリィナは、背筋を伸ばした。 「何故こんな所にいる?都市の見回りの時間だろう」 「は…はい? あの…いえ、今日の昼の見回りはロッジ大尉の筈ですが…」  きょとんと目を丸くしながら困惑した表情を浮かべるリィナにゴードンの険しい顔が眉間に皺を寄せることで、ますます渋くなる。 「…俺にはリグレイハ少尉に交代になったと連絡が来たのだが…またか」 「あ、でも時間ですよね。何かの手違いかもしれませんし、行ってきます」 「お前…その台詞、軍に所属してから何千回言った?」 「…えーと」 「数えんでいい」  指折り数えるリィナをゴードンは呆れたような表情で制する。 「数えなくてもいいんですか?」 「ああ」 「でも、数えないと何回言ったか分かりません」 「大丈夫だ。両手だけじゃなく足の指でも足りん。ついでに言うと俺の両手足を足しても足りんぞ」 「はぁ…」  どうにも頼りない返事を返すリィナにゴードンは呆れたように溜め息を吐いた。 「まぁ、私が行かないと多分誰も行かないと思うので、行きますね」  あまりにも爽やかすぎる笑顔を振り撒いてリィナは図書館を出た。 「…全く、自覚してるのかあいつは。…いや、自覚してるが故、か」  ゴードンは少し苛ついたようにリィナが先程まで頭を悩ませていた資料に視線を落とし、手に取る。 「上位治癒術式(ヒーリングマトリクス)の概要…?」  そこには難しい暗号文と魔法陣が描かれていた。  この世界における魔法を使用する際に必要な術式をマトリクスと呼称される。 「何故彼女がこんなものを…」  首を傾げるもゴードンは、資料を片付け、課せられた仕事へと向かった。
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