1人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
それから半年、生まれ育った町に戻り、そこで暮らした。
しかし、そこでもロックフォードの名を聞けば、好奇に満ちた目で人々はイクセルを見る。
トリーシャを除いては。
でも、自分を信じてくれるトリーシャの優しさに甘えていてはいけない事に気がついた。
だから確かめなければいけない。
アルトナ=ロックフォードとの関係を断ち切らなければ、自らの平穏は訪れない。
それが、大切な友達を裏切る事になっても…イクセルにはやらなければならないことがあった。
(最悪だな…)
何も分かっていない、なんて…辛い言葉を投げかけられてトリーシャは、悲しんだだろうか。
それとも怒っただろうか。
(分からなくて当然だ。僕だって何も分かっていないのに、あんな当たり方をして…)
だが、すぐに首を横に振った。
(いや、いいんだ。これで危機が免れるなら…根本的なものを断てば、解決する筈なんだ)
そう自分に言い聞かせる。
「解決はしませんよ」
か細く小さな声にイクセルは顔を上げた。
絹糸のような長い銀髪、深紅の宝石の如く美しい瞳…背の小さな人形のような色白の少女がイクセルの目の前にいた。
最初のコメントを投稿しよう!