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「例え、アルトナ=ロックフォードを倒しても解決にはなりません」
「君は…――」
君は誰だと問おうとした。
しかし、その前に少女はイクセルの向い側の椅子に座る。
「ノインテーターか」
ノインテーター…東洋では吸血鬼、ヴァンパイアやドラキュラと呼ぶものもいる。
イクセルやトリーシャのようなヒュムノスの生血を好むと伝説には刻まれているが、真実は定かではない。
見た目こそ人間とも呼称されるヒュムノスと変わりはしないが、鏡に映らないと言われているその種族は、案の定、窓にもその姿を映さない。
「私は、あなたのような方を見るとじれったく感じます。アルトナを殺せば、全てが解決するという浅はかで暴力的な考え方が気に入りません」
「君には関係ないことだと思うけど」
「そう、関係ない。でも、今からは関係する事です」
そう言って少女は薄ら笑いを浮かべる。
「私は、今この瞬間から、あなたを見極めさせてもらう立場になると決めました。ですから、時折はあなたの前に姿を現すでしょう」
「何を言って…」
「私の名はリムスレイア=マリアンヌ。あなたが無駄だと分かっていたとしても、本来の目的を曲げぬならそれも構わないと思います。でも、あなたが思う以上に世の中は甘いものでも優しいものでもありません」
まるで世界の全貌を知っているかのような口振りでリムスレイアと名乗る少女は告げる。
「僕の邪魔をしないなら、好きにすればいい」
「潔いんですね。私がノインテーターである以上、恐れるとかそういうのはないんですか」
「生血を吸われるかもしれないっていう恐怖はないよ」
「寧ろ感じないのでしょうね、あなたは。死や痛みの恐怖も生への拘りも」
「――…そうかもしれない。そんなものは、とっくに…」
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