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イクセルは自嘲気味に小さく笑った。
「それで、僕の生血を吸うのかい?君は」
「冗談ではありません」
即答だった。
「私はデリケートですので綺麗な血しか味わいませんし、雑食です。それに、あなたの血は特に不味そうですね。ろくな人じゃなさそうですし、捻くれています。そんな人の血が美味しいとは到底思えません」
切れ味のあるナイフのようにリムスレイアの言葉がイクセルに刺さる。
「じゃ、何をしたいんだ。君は」
「言いましたよ。あなたを見極めさせて頂きます。それだけです」
「どうして、僕なんだ。君に何の得が…」
「ただ単に暇つぶしです。ですから気にしないでお好きにどうぞ」
全く持って意味不明である。見極める…何を見極めるというのか。
目の前の少女は自分に何を期待しているというのだろうか。
暇つぶしと言っていたが、それはあまりに危険すぎる。
「悪いことは言わない。僕に関わるのはやめた方がいい」
「さっきは好きにすればいいって言ってたくせに。…理由を教えて下さい」
小さく諦めたような吐息がイクセルの口から漏れた。
「僕に関わるとロックフォードの亡霊がついて回るからだよ」
自嘲気味に笑うと、汽笛がなり車掌が目的地を告げる。
イクセルは立ち上がり、リムスレイアに見向きもせず歩き去る。
「…誰よりその亡霊に取り憑かれてるのは、あなたじゃないのですか」
イクセルが去った後も表情を変えることなく、リムスレイアは小さく呟いた。
機関車が到着する頃には彼女の姿はなかった。
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