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「血――じゃない。これは、ペイント弾か?」
想一が被弾したのは、シムニッションと呼ばれる実践訓練で使用されるペイント弾だと長太郎は判断する。
弾頭がプラスティックになっていて、中には着色液が入っているので、命中した標的はもれなく紅く染め上がる。
着弾した際、場所によっては青あざが出来る程度の痛みは伴うが、実弾と違って命に支障が出るほどの大怪我を相手に負わせることはない。
「ムハハ。購買のパンを買うために銃火器まで持ち出すとは、マジガチ本気じゃないっすか。先輩!」
長太郎は廊下に倒れたまま小さく呻きを上げている想一の前に立ち、購買の向こう側に居る人物を見据えて言った。
「そういう長太郎こそ、訓練服で購買に挑むなんて超気合入ってるじゃん」
両手でアサルトライフルを抱える、ショートの茶髪をした少年は澄んだ目を緩めて屈託ない笑みを見せる。
少年らしい少年の名前は、吉野敏。
長太郎と仲の良い三年生の先輩だ。
「いつだって気合い満点! 用意万全で戦いに臨むのがヒーローですから!」
腕を真っ直ぐに伸ばし、びしっと敏を指さした長太郎はもう片方の手でボストンバッグを開けて、中から自動拳銃――9mm拳銃を取り出した。
「流石、長太郎。わかってるな。生半可な気持ちじゃこの戦いに勝てないって」
茶髪の少年・敏はアサルトライフルを真正面に構えて、言葉を続ける。
「長太郎! 可愛い後輩だからって容赦はしないからな!」
「望むところっす!」
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