1.木曜日正午。授業の終了を

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戦いの最中、長太郎と敏は相手から目を逸らして、開け放たれた窓の外から跳躍し、一陣の風に乗って宙を舞う人影を見た。 乾いた銃声が続けざまに二発、校内に鳴り響く。 スカート、ひらり。 宙返りをくるりと決めて、華麗に着地を決めた少女は両手に拳銃を握りしめていた。 空から降りてきた女神と見紛うほどに麗しい容姿をした二挺拳銃の美少女。 熟したトマトを投げつけられたかのように、顏を赤く濡らして膝から崩れ落ちる二人の少年には目もくれず、彼女は購買部のお店の中へと悠然とした歩みで入っていく。 (今のは――) 立ち尽くしたまま、一歩も動けずに居た善司は、その美少女の顔に見覚えがあった。 学院長と同様、女神のような彼女のことをこの学院の生徒で知らない者は居ない。 名取刀子。 容姿端麗、頭脳明晰、実技も抜群のエリート中のエリート、東防中三年生の学年代表。 凛々しい表情のよく似合う黒髪の美少女である刀子は特に、下級生の間では男女問わず、絶大な人気を誇っていた。 (名取先輩――) 店から出てきた刀子の手には拳銃の代わりに、幻のパン《クサナギ》があった。 彼女は購買の入り口を微動だにせずにじっと見続けていた善司の視線に気付き、――ふっと微笑みかける。 一気に紅潮する善司の頬。 けれど、それは美しい女神の微笑を直視したからではなく――
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