1.木曜日正午。授業の終了を

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「想一くん!」 「やあ、善司。酷いザマだけど、まだ諦めちゃいないよね?」 善司は図星を突かれ、「ぐ」と喉に飴玉でも詰まったような声を出す。 「ピンチは己を輝かせる最大のチャンスだよ。どうにもならない状況からの奇跡の逆転劇。物語は佳境に入り、映画だったら、今が最大の見せ場だ」 善司は予め用意された台本を読んでいるかのように、滔々と語る。 「しかも、相手はあの黒部一樹先輩だしね」 黒部一樹。 その名を聞いて、善司は戦慄する。 運動能力が高く、実技訓練においては彼の右に出る者は居ないと教官からも一目置かれるような人物。 けれど、知り合いの先輩たちには「目的を達成するためなら、何をしでかすかわからないアブないヤツ」だと善司は聞かされていて。 (ま、まさか、ホンモノじゃないよね?) 相手が誰かを知った今、刀子とは百八十度違った意味で有名な先輩が自分の頭に銃口を向けられている現在の自分の状態に、命の危険すら感じてしまう善司だった。 「おれの名前は眞柴惣一です。このような形とはいえ、優秀な黒部先輩とお手合わせ出来るとは光栄の限りです」 「何言ってんだ。おれはただ、購買にパンを買いに来ただけだ。別に後輩たちと戦いに来たわけじゃないんだぞ」 人の頭に拳銃を突きつけながら言うセリフじゃないと、善司は心の中で小さくツッコミを入れた。
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