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「想一くん、大丈夫!?」
善司は心配そうに声を上げ、校舎の壁に思いきりぶつかった反動で廊下に尻餅をついた想一に駆け寄る。
「い、痛みは取り除ける。意識から切り離せば。――なんて、無理だ。普通に痛いや」
「そりゃそうだよ」
半ば呆れ顔の友人の手を借り、想一は頭を打ちつけた頭をさすりながら起き上がり――自分たちがここまで走ってきた廊下を見やる。
視線の先には、エンジ色のヘルメットと訓練服に身を包んだクラスメイト、遠藤長太郎の姿があった。
「長太郎くん!」
「遅いぞ。何やってたんだ?」
二人の元に辿り着いた長太郎は鼻をこすり、にやりと意味ありげな笑みを浮かべる。
「ムハハハ! 少々、準備に手間取ってな」
彼はそう言って、肩に提げるOD色のボストンバッグをぽんぽんと叩いた。
「つーか、なんでその格好? わざわざ着替えてきたわけ?」
三本足の太陽の化身――八咫烏のシルエットが記された校章つきの学生服に身を包む想一は、訝しげな視線を長太郎に向ける。
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