1.木曜日正午。授業の終了を

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「戦わざる者食うべからず! 困難に打ち勝ってこそのヒーローだ!!」 長太郎は胸を張り、ムハハと豪快に笑い声を上げた。 「卵を割らなければ、オムレツは作れない。行動しないと欲しいものは手に入らないしね。何より、幻のパンを巡って生徒同士でバトロワるなんて漫画みたいな展開、非日常感たっぷりで最高じゃん♪」 「想一くんまで。ハァ」 やる気満々の二人を見て、もう何を言っても無駄だなと善司は溜息をつき、肩を落とした。 「ムハハハ! それにこの争いを制すれば、明後日から始まる夏季総合演習のゲンも担げるしな!」 夏季総合演習。 東都防衛学院では毎年、一学期を終えたあとから陸上自衛隊教育隊の全面協力の下、静岡県富士山麓で戦闘訓練が行われる。 長太郎たちもまた、明日の終業式を終えれば、次の日からは鬼教官の怒号が飛び交う山中で兵士としての訓練を受けることになっている。 武装中学生に夏休みはない。 ※ 昼休み開始の合図を受け、誰よりも先に幻のパン《クサナギ》を手に入れるために三人は廊下を疾走する。 「見えたぞ、イザナギ!」 「よし! おれたちが一番乗りだ!」
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