1.木曜日正午。授業の終了を

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「まさか、先客が居たとはね」 廊下の角を曲がって学院長の姿が見えなくなったのを確認し、想一は立ち上がりながら口を開く。 「おれたち生徒の授業が終わる前に購買に来て、いとも容易く《クサナギ》を手にするとかさ。――おれはきみたち人間が信じられないようなものを見てきた」 「ぼくらも今、目の当りにしたけどね」 「学院長特権恐るべし、だな」 よし、と両膝を叩いて長太郎も腰を上げた。 「ムハハハ。だが、落胆するのはまだ早いぞ。《クサナギ》はまだ二個残されている。それを三人で分ければ――」 「無問題! 他の生徒たちが来る前に、行くぞ。おれのケツについてこい!」 「ま、待ってよ」 次の瞬間、勢いよく走りだした想一とそれに続こうとする長太郎と善司の耳に――銃声が鳴り響いた。 「想一くん!」 「想一っ?」 二人の前を行く想一は突然、仰向けに倒れる。 彼の胸は真っ赤に染まっていた。
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