1章 文化祭前

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文化祭を数日後に控えたある日の放課後。 私たち生徒会役員は、生徒会室で各々文化祭の準備をしていた。 電話が鳴る。 谷崎さんが出た。 「はい、生徒会室谷崎です。神坂先生? ……はい。えっ? 分かりました」 「何て?」 私は谷崎さんが受話器を置いたのを見てすぐに声掛けた。 「グランドで展示物の動画を撮影していたところ、ミスして木を倒してしまった人がいるそうです。それの片付けを……」 「生徒会って雑用が多いですね……」 廊下で鳴海さんが呟く。 「仕方無いわ。でも、校内での雑用は会費が入るのよ」 私は生徒会室の鍵を閉めながら言った。 「そうなんですか?」 私と鳴海さんは後ろから先に行った役員を追い掛けながら昇降口へ向かう。 「ええ。倒木くらいの大仕事なら、一回一万円くらいもらえるわね」 「そんなに沢山!」 「そうよ。だから頑張らないとね」 昇降口に着き、下靴を取り出す。 と同時に靴箱から紙が出てきた。 半分に折られたA6サイズ。 広げてみて、少しだけ驚いた。 『役員に告ぐ。 一、今からでも遅くないから生徒会を開散せよ。 二、抵抗するものは全部逆賊であるから追放する。 三、お前達の父母兄弟は皆泣いておるぞ。 二月二十九日 反生徒会の会』 「この文章、二・二六事件の時に撒かれた紙に似てますね」 いつの間にか、私の横から紙を見ている谷崎さんが言った。 「純、どうしたの?」 文菜がそう言って紙を見る。 「これ書いたの、春先の投書と同じ人ね」
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