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真奈の言葉が頭をまわっていた。
(…景子に逢いたい)
心の底から思った。
「高太、広樹くん泣いてるぞ」
木下が通りがかりに言う。 俺は広樹の病室に急ぐ。 大きな声だった。
「どうした?」
俺が聞くと広樹は俺にしがみついてきた。
「パパにあいたい」
「広樹…」
俺はおもわず呟いてしまった。
「パパは、いま広樹のこと想いながらお空とんでる」広樹を抱きしめて俺は言う。その時窓の外を飛行機が通りすぎた。
「パパかもしれないよ。広樹に『がんばれ』って言いにきたのかもしれない」
広樹は飛んでいく飛行機をじっとみつめていた。
打ち合わせが終わり、2階に降りる。明日の手術の資料を読み返し、まとめる。3ヶ月後にひかえた学会の準備もしなければいけない。
「唐澤医師(からさわせんせい)、広樹くんの検査の結果です」
歩きながら検査結果を見る。「熱は?」
ここ2.3日微熱が続いている。泣きじゃくる元気はあるのだが心配だ。
「下がりません」
「4時頃、解熱剤をうってください」
「はい」
「4時半には広樹の病室に行きます。おねがいします」「分かりました。失礼します」
俺はカルテを受取りに1階に行く。医事課を抜けると公衆電話が目に入った。
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