ある初夏の日

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しばらく切り株を眺めていて、ふとそれに気付いた。 切り株の端、ほんの小さなものだが、新芽が出ている。 ひときわ強く風が吹いた。 「ヴィオ坊っちゃん」 聞こえた声に、慌てて立ち上がり振り返る。 彼女に出会ったころの私と同じくらいの、 茶色い髪と、木漏れ日のように暖かな緑の瞳の少女が立っていた。 私は泣きそうになるのをこらえて必死に笑顔を作った。 「おかえり」 彼女は懐かしい笑顔で微笑んだ。 「はい、ただ今戻りました」
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