ある初夏の日

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その日から、いつも私のそばには彼女がいた。 勉強や礼儀作法、さまざまな稽古事、 社会のこと、自然のこと、異国の文化、 彼女は知らないことなど無いのではないかというほど、 様々な知識を持っていた。 「ねえ、この花は?」 「その花はですね・・・」 「僕あんなの初めて見た!」 「あれは東の国の・・・」 「一緒にクッキーを作りましょうか?」 「うん!」 「今度、女王陛下がね・・・」 「それは、すばらしいですね」 彼女が来てからの5年間。 いろいろなことを体験した。 毎日があっという間に過ぎていったのを覚えている。 当時、ほんのわずかしかいなかったメイドや庭師も、 彼女を頼りにしていた。 家は両親の努力もあり、 次第に名を上げ、 私も、陛下から爵位を与えられるまでになった。
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