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そして、五年前。
年が明けたころから彼女が体調を崩した。
みんなが彼女に休むように言ったが、「大丈夫ですよ」と笑って、
それまで以上に様々なことを、私に教えてくれた。
今思えば、何かに追い立てられるかの様だった。
その年の初夏。
ちょうど今くらいの季節だ。
庭師が、私にこう告げた。
「庭の古木に、病気がついています。
古い木でもありますし、もう持たないでしょう。
完全に枯れてしまう前に切らなければ、
倒れる可能性があるので危険です。
申し訳ありません、手入れが行き届かず・・・」
申し訳なさそうにうつむく彼に、
「いや、教えてくれてありがとう」
そう言いながら微笑むと、
少しだけほっとした様子で、庭に戻って行った。
古木の件は残念だったが、彼のせいではない。
あの広い庭を、管理人と二人で良く整備していると思った。
古木を切らなければならない事を、セエレにも伝えなければと、
私は彼女を探した。
彼女を見つけたのは、ちょうど古木の下だった。
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