0人が本棚に入れています
本棚に追加
それから、屋敷の者総出で探したが、
一週間たっても、一か月たっても、
彼女が見つかることは無かった。
彼女がいなくなったのと同じ、
月のない夜。
私は一人きりの部屋で、
声を殺して泣いていた。
当たり前の様にいた人が、突然いなくなった。
孤独感と、喪失感。
不意に机の上に置かれたヌイグルミが目に入った。
彼女は何故かこのヌイグルミを気に入っていて、
良く、見つめたり、抱いていたなと思い、
そっとヌイグルミを抱き上げた。
黒いボタンの瞳。
その周りだけ、うっすらと色が変わっている。
触れると、僅かだが濡れていた。
「お前も、寂しいのか?」
自分でも馬鹿なことを言ったと思った。
だが、それ以上に悲しくて、
ヌイグルミを抱きしめたまま、声を上げて泣いた。
最初のコメントを投稿しよう!