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1.修羅
ブォー・・ブフォー
「ワー・・・・・」
ホラ貝の音とともに、一斉に刀を持った侍や、槍を持った足軽、馬にまたがった武士が草原を駆け巡る・・
草原の先に、浅い川原が広がる。
川原の対岸に、旗が上がる。
パーン パーン
銃声が轟く・・数名の足軽が倒れ、馬に乗った武士が撃ち落される・・
ひるまず、敵陣に走っていく軍勢・・
銃を構えていた足軽が、槍で突かれる・・胸を突かれた者・・首を突かれた者・・返り血を浴びる足軽や侍達・・
手や内臓、首が、血と共に飛び散る・・
バタバタと倒れていく双方の兵士達・・
川原は、その血で赤く染まっていった・・
ここは、修羅の世界・・この世で人を殺め(あやめ)たり、争いを好む人たちが来る世界だという・・
鬼の教官に案内されて、翔子ちゃんとお父さんが見学に来ていた。
翔子ちゃんは、その光景に耐え切れず、目を手で覆っている・・
お父さんは、直視できない・・
鬼が、翔子ちゃん達に向かって、話し出す・・
「これが、修羅だ・・。
前世で戦いに明け暮れた者達が、集まる場所・・
互いで互いを傷つけあい、命を奪う・・
最後の一人になるまで戦い続ける・・」
「最後の一人?」
お父さんが、聞き返す。
「最後の一人になった時、ワシと勝負することができるのだ・・」
「あなたと?」
「それで、勝つことができれば、悟りを開くことができる・・
ワシと同じ『鬼』になることができるのだ・・
まあ、大半は、負けるがな・・」
「それ以外の人たちは?」
「ワシとの勝負が終わるまで、もがき苦しむ・・
それまで、死の苦痛を味わうのだ・・
そして、また、生き返り、戦いが始まる・・」
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