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車が停まった。窓から外を見ると、僕の住んでいるアパートが見えた。
「着きましたよ」運転席の人がこっちを向いて言った。
「ああ、ごくろうだった」
「ありがとうございます」僕は、二人に向けて言った。
「リュウノスケ、俺も行くぞ」
「おじさん、本当に僕一人で大丈夫です」
「お前が大丈夫でも、俺が大丈夫じゃねえんだよ」
「何でですか?」
「俺は、お前を守るって決めてんだよ。いいか、俺の職業は一度決めた事は、どんな汚ねえ手を使っても成し遂げなきゃならねえんだよ」
「……わかりました。でも、まずは僕一人で家に行きます。少し経ったら来てください」
「ああ、玄関の外で待ってる」
「運転ありがとうございました。助かりました」
「いいって。正直お前には同情するよ。なんつーか、困った事あったらーー」運転席の人は、話の途中で顔を抑えた。
「お前、泣いてんのか?」
「だってキザキさん。こいつ……、ああ、ちくしょう」
「泣くんじゃねえよ。いいか、リュウノスケが今生きてるのは、お前のお陰でもあるんだぞ」
「俺はただ……ビビっただけっつうーか」
「いえ。あなたのお陰です。本当にありがとうございました」僕は、運転席の人に言った。
「リュウノスケ、マジで頑張れよ」運転席の人は、そう言うと前を向いてしまった。
「じゃあ、行きましょう。おじさん」
「ああ」
車を降りる。空が灰色の雲で覆われている。
「雨、降りそうだな。嫌な雲だ」
「傘、家にありますよ」
「そうか。それは助かる」
僕は、おじさんを見たあと、僕のアパートに向かった。
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