野獣

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 目覚めが悪いのはいつもの事だ。  どんなに寒い日でも身体中に汗をかき、喉は潤いを求める。あの日の事を毎日夢で見る。繰り返されるあの絶望を、俺は忘れる訳にはいかない。身体に刻み込まれたその絶望が消えた時、それは俺が死ぬ時だ。  鉛のように重くなった身体を、起こす。ベッドから立ち上がり、冷蔵庫に向かう。ミネラルウォーターを飲み、煙草に火をつけた。俺の一日は、そうやって始まる。  カーテンを開けると、夜空が輝いていた。いくつもの星が、暗い空に浮かび上がっている。夜空から視線を落とすと、腐りきった街が姿を現す。  様々なネオンが街を輝かせていた。俺にはそれが、本当の姿を隠しているカモフラージュにしか見えない。暴力、狂気、憎悪、絶望、そういった黒い部分を、必死に隠している。どの街も同じだ。本当の姿は、夜に現れる。  カーテンを閉め、ベッドに腰を掛け、こめかみを触る。今日は、酷く頭痛がした。瞼を強く閉じ、歯を食いしばる。やがて痛みは消え、大きくため息をつく。 「まるで野獣だな」  奴の言葉が頭に浮かんだ。そして、あの光景が浮かび上がってくる。悪夢は、眠ってる時だけにしてくれ、と思わざるえなかった。
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