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「悪いな、少し前から見させてもらってたよ」男は、煙草に火をつけた。
「誰だ」
「さあ、誰だろうな」そう言って男は近付いてきた。俺の肩をポンっと叩いた。そのまま男は俺を通り過ぎ、倒れている男の元に向かった。「うえ。人間の顔ってこんなにグチャグチャになんのかよ。エグいな、おい」
「どうするつもりだ」俺は言った。
「どうするかねえ」男は、煙草を血だまりに捨てた。「一つ、あんたに事実を教えてやる」
「事実?」
「あんたは、人を殺した」
人を殺した? 俺は、人を殺した?
「その表情を見ると、初めてみたいだな。殺しは」
「何を言ってるんだ」
「しゃあねえな、見てみろ」男は、倒れている
男の髪を掴み顔を俺に見せる。「ほら、これが生きてるように見えるか? これは人じゃねえ。死体だ」
俺は、それを見ても何も思わなかった。
何も感じない。何も感じない。
「そうか。あんたは、本能で殺したんだな」男は、手を離す。それは、地に崩れ落ちていった。
「まるで野獣だな」
男は、俺を見つめる。冷めた眼光が俺を覆う。
「正当防衛にしちゃあやり過ぎだ。あんたも無事じゃ済まねえかもな」
「どういうことだ?」
「めんどくせえ話はなしだ。単刀直入に言う。俺の世界に来い。俺ならあんたを生かす事が出来る」
「俺を生かす?」
「ああ。この状況も、揉み消してやる」
俺は、死んでないのか? 生きれるのか? 妹は死んだ。俺は、生きるべきか?
「お前の名を教えてくれ」
「それは、了承したって事でいいのか?
「ああ」
「俺の名はキザキ。最強のヤクザだ」
俺は、死んだように生きる事にした。
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