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対して葉山蒼はと言うと、"女が苦手"と言うよりも"女は面倒くさい"と言う方が正解に近いだろう。
爽やかな顔立ちと長身とスタイルの良さ、おまけにスポーツ万能ときたら、放っておかない女は少なくないだろう。
高校の頃から密かにモテていた蒼の周りでは、いつも女子がキャーキャーうるさかった。
そんな彼女たちを葵は、どうせ見た目とか自分の株上げとかで自分のことを気に入っているだけだろうとしか思えなかったのだ。
誘いを断ると何かと非難される、しかし承諾しても、それはそれで何かと言われる。
それが面倒くさいと感じた原因の1つで、今までちゃんとした恋愛などしたことがなく、中途半端な恋愛しか経験がないのだ。
蒼が"女は面倒くさい"と思う理由はこれだけではないのだが……それは追々、自ら誰かに話す時が来るまで待っていよう。
恋愛に関しては冷めているが、しっかりしていて、優しさと思いやりに溢れる人間なのである。
ガラガラっ…と直樹が店の扉を開けた。
瞬間、小さな店内からいくつかの「らっしゃっせー!!」と威勢のいい声が返ってくる。
「こんちゃー!!」
と、二人がある人物に挨拶した。
「おお!!らっしゃい!!」
その人は、この店の店長だ。
「よっちゃん!!こないだ教えてもらった通りに肉じゃが作ったんだけどさー、なんかすんげー辛かった。」
と、カウンター越しに蒼が言った。
「お、早速作ったか!!煮詰め過ぎたんじゃねーか?」
「蒼のより、やっぱよっちゃんのが美味かった。」
「それは否定できねーわ。」
"よっちゃん"と、まるで兄のように二人から慕われている、この店"ヨイヨイ"の店長、荒井 良幸(あらい よしゆき)。
二人がこっちに越してきてすぐ、料理が出来ない彼等がよく夕食を食べに来たことから仲良くなったのだ。
なぜここまで仲良しなのか?
それは、すべてタイミングの問題。
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