一章:月神村

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電車に揺られる事かれこれもう5時間、 外の景色もすっかり田舎に変わった頃 ようやく目的地であるこの場所 【月神村】(つきがみむら)に着いた。 祖母の家に親戚の法事により十日間預けられる事になったんだ。 山の方から時々吹いてくる風が心地良い。 荷物が重いのでばあちゃんの家に急いで向かう。 歩いて行く途中の雑木林では都会では聞いた事の無いような蝉時雨…… 正直、かなり五月蠅い…… 暫く道なりに進んでいくこと30分、漸くばあちゃんの家に着いた。 「やっと着いたよ……ばあちゃん?いる?」 俺がばあちゃんの家の中に向かって声をかける、 「おや、湊ちゃん、着いたのかい?疲れたろう?さ、中へおはいり」 ばあちゃんに言われるままに案内された部屋に荷物を置く。 ばあちゃん曰くこの辺には山や川があるだけで他には9時~20時まで営業のスーパーがあるぐらいだとか……本当に田舎なんだなと痛感する。 取りあえずばあちゃんの家にいつまでも居ても退屈なので散歩する事にして財布と携帯だけ持ってばあちゃんの家を出て当ても無くフラフラしていたら…… 「……どこだよ……ここ……」 はい、ものの見事に迷いました。誰か道案内をしてくれ、300円あげるから。 「落ち着け……こんな時こそ冷静になるんだ……」 「あの~そこのキミ?」 「取りあえず適当に歩いてみるか?」 「ちょっと?」 「いや、でも適当に歩いて更に迷ったら面倒だし……」 「もしもーし聞こえてますかー?」 「ん?」 気が付くと俺に向かって声を掛けてくる同い年くらいの女の人が居た。 いつ来たのか全く気が付かなかったんだがいつから居たんだ? 「さっきから家の前をぶらついてどうしたの?この辺じゃ見ない顔だけど……」 なんか俺の事を不審者でも見るかのような目で見てくるな…… まぁ2時間もフラフラしてたら変な目で見られるのも仕方ないよね。 「まぁこの辺じゃ見ない顔ってのは当たり前だな、俺ここに住んでる訳じゃないし」 「ふーん……キミもお祭りを見に来たの?」 「お祭り?別に見に来たわけじゃないけど?」 そう言うと彼女は面白い物を見たかのようにこちらを見た。 やっぱり田舎ではお祭りとかの理由以外で人が来るのは珍しい事なんだろうか? 「へぇ、で?キミは家の前で何してたの?」 ただ迷っただけなんだが……流石に迷子になりましたってのは気恥ずかしいな…… なんとかごまかせないかな……
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