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夕方6時くらい、、、
満月でもなく、そう欠けているわけでもない月がオレンジ色の空に浮いている。
午前中は、あれ程晴れていたのに
今は、所々に雲が散らばっている。
敦が口を開く。
「テストできた?」
「センター試験の模擬テストみたいなやつ?」
「それそれっ」
「ぜっんぜん時間足りんかったわ、あんなんうちには無理だわ。。。
こんなあたしを、どこの大学が欲しがるんだろう」
表情を見る限り、相当できなかったと見える。
落胆が体からにじみ出ている。
玲奈の歩く早さが若干遅くなった気がした。気のせいだろうか。
うん、きっと気のせいだろう。
敦は、話題の選択ミスだったと、心の中で自分にげんこつした。
「だよな、俺もまったく、、、
俺なんか時間どんだけもらっても解けねーよ
もうすぐ夏休みっていうのに、今年は遊べそうにないな」
敦はテストのできを思い浮かべながら言った。
しかし、
これは、嘘だ。
敦はこれ以上なく、今回の模試に絶対的な手応えを感じていた。
きっちりと引かれた線路を走る電車に乗っているような気分だ。
ただ、、
ただ、あの玲奈の表情をみたら、簡単だったなんて言えないだろう?
嘘も方便とは、この事だ。
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