83人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は鍵をポケットに収めてから煙草を手に取った。
「すいません。煙草を喫ってもいいですか?」
「えっ? はい、どうぞ」
「すいませんと言っておきながら、すいますって変ですけどね。はは……」
そう言いながら僕が煙草に火を点けると
「まあっ! ……あははは、うぷっ」
彼女は両手で口を塞いだ。
軽い冗談が通じた。だが、この一言は実は余計だ。もし麻美が居たなら、何故、よその女の歓心を買おうとするのかと注文がつくかも知れない。
貴恵さんが余りに畏まっているので、それを和ませる以外の他意はないのだが、女性はそうは取らない。このへんの感覚の違いを説明できないから男と女は難しい。
「お待ちどうさまでした」
トレーを抱えた女主人が立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!