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「そうなんです。そこが解らなくて……あの、こんなこと高村さんに伺うのもどうかと思うんですけど……」
「なんでもどうぞ」
僕は灰皿を横へ押しやって飲み物のグラスを手元へ引き寄せた。
「兄はサークルのどなたかと交際中ではなかったでしょうか?」
「サークルの誰かと? 女性と付き合っていたかと言う事ですか?」
「はい」
「うーん。サークル内で、それらしい行動を見かけたことはなかったなあ。彼とは何度か飲みましたが、居酒屋でもそんな話題は出なかったですね。いや、僕は去年の年末頃から時々にしか参加出来なくなりましてね。だから今年の事は良く解らないというのが正直なところです」
「そうですか……」
貴恵さんは当てが外れて、少しがっかりしたようだった。
「でも、何故そう思うんです?」
「着信履歴です。これですけど」
そう言って貴恵さんは携帯を手にとって開いた。
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