着信履歴

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「いえ、兄が誰かに怨みを買うような事は無いと思います。事故死に不審を感じていると言うよりは、兄が何故、これを置いて出たのか、どんな事情があったのか、それが気になって仕方がないんです」 「この事を警察には話したのですか?」 「ええ。携帯電話は単に置き忘れたと見ているようでした。当時の事故現場付近には霧が出ていたので、視界の悪かった事がハンドルを切り損ねた原因と結論づけられたのです」 「なるほど。携帯電話が現場にあったなら違ったかも知れませんね。この鍵の件は?」 僕はポケットから鍵を取り出して尋ねた。 「それも訊いてみました。でも単に兄の持ち物としか……。事故死と断定された訳ですから、それ以上の捜査は必要ないと判断されたのだと思います。死因に疑わしい事が無いと言われてしまえば私も、それ以上は」 「なるほど。確かにそうですね。警察は事件性が無ければ動かないものと聞きます」 「私も犯罪が絡んでいるとは思いません。ただ、兄がこれを置いて出た理由は、私に何かを伝えたかったのではないかと。それで高村さんを思い出したんです。サークルで良くしてくれる先輩がいると以前から聞いていましたから」
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