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最初に感じた通り、この店は小さな演奏会場だったのだ。
携帯で時刻を確かめると20時5分前だった。
この場に長居すると麻美からの追及が厳しくなりそうだ。
「演奏が始まるようですね。聴いてみたいのですが、この後に予定があるものですから」
僕が席を立つと
「ええ。どうぞ、そちらへいらして下さい。お忙しいところをすみません。私は少し聴いてから帰ります。ありがとうございました。宜しくお願いします」
彼女も立ち上がり、辞儀を正して頭を下げた。
伝票を取ろうとすると
「いいんです。ここは私が」
貴恵さんが素早く、それを掴んでいた。
「では、結果が判り次第、連絡します」
と告げて、僕は店を後にした。
夕闇が深くなり、色とりどりのネオンサインや街灯に彩られた街並みは、きらびやかな雰囲気に包まれていた。
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