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「お待たせしました」
店員がワインボトルとグラスを携えて現れたので僕等は会話を中断した。
店員が慣れた手つきでボトルの栓を開け、二つのグラスにワインを注いで行く。麻美はワインの銘柄を訊いている。
続けて別の店員が注文の料理品を運んで来た。
注文は麻美に任せた。彼女は赤ワインに合う肉料理の中から、何とかという名の少人数向きのセットコースをチョイスしたようだった。
「はーい、構えて」
「うん」
麻美が、にっこりしながらグラスを掲げたので僕もグラスを手に取った。双方からグラスを近づけてカチンと軽く縁を合わせる。
「おつかれさま」
「うん、お疲れ様」
僕よりも麻美の方がアルコールに強い。それは最初に恭子を交えて飲んだ時からそうだった。彼女は僕の倍ほどの量のアルコールを愉しみながらも決して乱れない。
酒に酔うことはあっても酔っぱらって、ぐでんぐでんになるような醜態を晒す事は無かった。
麻美はグラスを空ける勢いだが、僕は一口だけ飲んでグラスを置き、サラダを食べようとフォークを握った。
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