疑問

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「うん。【ソナタ】は第一、第二、第三楽章って言うように幾つかの楽章で構成された器楽曲の総称。【ソナタ形式】っていうのは、楽章の中の決まり事……小説の起承転結のようなものかな」 「小説? 物語性があるってこと?」 「うん。【ソナタ】の全体像には物語性がある。小説のようにね。これに対して【ソナタ形式】は楽曲の記述法のこと。古典派の作曲者達が作り上げた規則性のある作曲上の決まり事だよ。序奏から始まって第一主題、第二主題……いや、これだってモーツァルトやベートーベンの登場で型が破られたんだけどね」 「ベートーベン? ダダダダーンの事?」 「いや、あれは交響曲第五番【運命】だけど、それよりはピアノソナタ第十四番の……そうか ! それだ ! 」 「なに、何なの?」 「だから、【月のソナタ】はベートーベンのピアノソナタ第十四番【月光】の事だよ。間違いない。ターンっタターーーン……ターンっタターーーン……ゆったりと流れるような調べの第一楽章が有名だけど、実は第三楽章まである。【月光】っていう名前は後から……ベートーベンの死後、レルシュタープという詩人が付けたんだ。第一楽章の調べが、月光に照らされながら湖で揺れる小舟のようだってね」
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