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 初めに『彼女』がそこにいることに気づいたのは、遠藤真帆だった。 そのとき真帆を含む東都防衛学院中等部二年二組は、情報処理演習というLinuxの簡単なコマンドを学ぶ講座を受講していた。 新学年になってまだ1か月だから、授業はまだかなり初歩的なことをしている。 (なんだろう、こいつ)  それはネットワーク内を飄々と横行していた。足跡を残そうとしているようだ、と真帆は感じた。かまってほしいのかな。 ネットでたまに見かける、暇人ハッカーの仕業だと真帆は判断した。 彼らは自分の能力を試さずにはいられない人種であり、こうやって他人のネットワークへ侵入してくるのだ。 ある有名なプログラマの趣味が近所にある銀行のセキュリティ破りだった、という話はよく知られている。 そういうことに慣れていた真帆は、今回の講義の課題は終わって暇だし、遊んでやろうと思った。 ところが、真帆が追跡を始めると、相手はパッと姿を消してしまった。 「えっ」  思わず声が漏れた。これだけ痕跡を残していたのに、足跡が急に途絶えてしまったのだ。 これほど華麗に姿をくらませるなんて、真帆には信じられなかった。 何か、嫌な予感がした。
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