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 長太郎のディスプレイ上で、小さな少女が袋に何かを詰め込んでは画面の奥へと消えていき、また戻ってくるという反復運動を繰り返している。 そしてその少女は、確かに真帆に似ていた。 少女の周囲は真っ暗であり、キー操作は無効になっている。 「何これ。おまえがやったの?」  不思議そうに眉を上げて自分を見る長太郎に、真帆はふるふると頭を振った。目は画面から離さない。 「お、すげえ」  長太郎の声に反応し、真帆もその視線を追う。 「えっ」  真帆の瞳が動揺に揺れた。見える範囲のすべてのパソコンに、真帆に似た少女が映し出されていた。 生徒全員が真帆の方を向いている。長太郎が気まずげに人の好い笑顔を浮かべ、頭を掻く。 真帆はまわりことを忘れ、コンピュータ室のパソコン群を猫背気味に見つめていた。 真帆を模した少女は、集めたモノを宝箱に入れて傍らに置き、こう言っていた。 〈返して欲しかったら私の欲しがるものをちょうだい〉 授業担当のアメリカ人教師、シャロンが真帆を呼んだが、彼女は返事をしなかった。少女は笑っていた。真帆は左目を眇めた。 (何が欲しいの?)  真帆が問い、少女は答える。 〈頭を使えばわかるはず〉 〈私の名前はミネルヴァの梟〉
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