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「…まずはおめでとう、と言うべきか」
壮年の男性が呟く。
一度に二席の王剣が変わるのか…と周囲がどよめいた。
「お前は剣聖となるべく力を付けそしてそれに相応しい剣士となった」
だが…と男性は続ける。
「その剣は護る剣ではない…」
冗談じゃない。護るために身につけそして振るってきた。
護る剣以外の何者でもない筈だ。
「お前も本当は理解しているだろう?」
ふざけるな、護ることとは即ち向かってくる敵を討つことだろう?
「お前の剣は人殺しの剣だ…」
ズキリと心が痛む。
違う…僕はそんなことのために剣を振るってきたわけじゃない…。
「強さを求める気持ちは理解する、理由も知っている。だがな、剣だけでなくお前の血と才覚はいつか流血を求める。よって…」
だから『彼女』の側には置けない…か。
「ルイス・ベルリオーズ、貴公を王剣が一席『剣鬼』に任命する。今後は北の国境にて防衛の任に就いて貰う。」
「有り難き幸せ…確かに拝命しました。」
僕が絞り出せたのはこの一言だけだった。
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