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「いやぁ、お嬢ちゃんみたいな美人さんがいると華があっていいねぇ。」
「ご覧の通り身一つなので、お世辞を言っても何も出ませんよ?」
まさか、と商人は首を振る。
「いやいやお世辞だなんて。お、美人といえばこれから向かう国境の街ジュノアの砦に、少し前に王剣が赴任してきたんだけど、これが凄まじい美人らしいんだよ。」
「国境の砦は私の赴任先です、どんな上司なのか気になりますね。」
「お嬢ちゃんは騎士様なのかい、最近の女の子は勇ましいなぁ、失礼な話だけど魔法が普及した恩恵であり弊害でもあるね。」
遠い目をする商人だったがふと思い出したように
「おっと、王剣の話だったね。ちょうどお嬢ちゃんみたいな年頃の女の子はみたいなんだけど、恐ろしい腕利きらしくてね、既にこの辺の盗賊を相当斬ってるみたいだね。北方の担当だから『剣鬼』の座に当たるんだけど陛下もお気に入りらしく、同じ読みで『剣姫』が称号になってるらしいよ。」
「ふむ、時に商人さん」
ふと、少女の雰囲気が剣呑なものになる。
「この辺りはまだ野盗は多いのですか?」
「ぁ…あぁ、元々治安が悪かったからね、まだこの近辺は時々出るよ。」
「気配がします、伏せて…」
そう言い残すと少女は抜刀し、道端の茂みに斬りかかる。
茂みから悲鳴が上がると同時に男が四人道にまろび出てきた。
「ちっ、折角の上玉かと思ったら腕の立つ護衛かよ!?」
「他に護衛はいない、囲むぞ。」
四人が口々に悪態をつく。
「敵の目の前で作戦会議は感心しないな。」
即座に一人を切り捨てる。盗賊の一人が悲鳴もあげずにくずおれる。
が、まだ3対1…
「そこと、そこ…それならっ!!」
手にした剣を地面に突き立てる、同時に剣に施された刻印の一部が紅く輝く――――
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