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ジュノアの砦は武骨さというものから無縁の代物だった。
防御に優れた外壁はあるものの、近隣住民の避難所としての性質が強いのかよく整備された庭の敷地は広く中央にぽつりと大きな役所のような趣の館がそびえていた。
「なんだこの文官趣味の代物は…」
「さて、まずは北の国境にようこそ…」
「ーッ!?」
気がつけば背後を取られていた…
アリサが振り向くと、アリサ同様に軽装であるが騎士の恰好をした若い男が立っていた。
年の頃はアリサと同じぐらいか、長身痩躯でどこにでも居そうな雰囲気を醸しながらも女性好きするような整った容姿の青年だった。
「いつからそこに?」
「んー、今し方? 穏形は得意だけど今回はそれが目的でもないしねぇ…」
少し面倒くさそうに頭を掻く青年。
「…かといって挨拶だけが目的ではないと?」
「うん、美人さんにこのまま食事のお誘いでも良かったんだけど、ウチの麗しの上司様から腕前を見るように言われてね~」
「………そう」
得心行ったとばかりに剣を抜き放つアリサに青年は苦笑を漏らし。
「話が早くて助かるよ…」
細身の長剣を向けた。
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