足手まといもいい所

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 『目白ぉ~目白ぉ~』  車掌のアナウンスが流れ、涼子は内心でホッと一息ついた。  目的地がすぐそこに迫っているのだ。  列車が速度を落としてJR目白駅に滑り込む。学習院大学が近くにあるこの駅はさほど大きくは無いが、通学で降車する学生が多い。  オッサンから開放された涼子は、赤いランドセルを背負った少女の姿を認め、こんな子供まであのラッシュの列車に乗っていたのかと驚きながら駅の改札へと向かう階段を上った。 「せんぱ~い、待って下さいよぉ~。靴紐踏まれちゃって、ほどけてて……」  声に涼子が振り向くと、屈んで靴紐を結ぶ優二の姿があった。  このクソマヌケ。涼子は優二に向かって内心で吐き捨てた。上司の命令が無ければこんな役立たずの新米と組んだりはしない。  否、捜査なら一人で充分だ。この男はおまけを通り過ぎて足手まといでしかない。  涼子は優二を無視して改札を通過した。  涼子は元々捜査一課強行犯捜査三係の刑事だ。  それが、巡査部長の試験に合格して配属替えとなり、捜査二課三係になったのだ。  捜査一課は殺人事件などを扱ういわば刑事の花形だが、捜査二課は詐欺などの犯罪を扱う。勿論、そういった事件を調査し、解決しなければならない事は涼子にも理解できるが、一課の仕事に比べていまいち緊急性が感じられず、やる気が起きないのも事実だった。  そこにもってきて篠原優二である。  昇進試験に合格したと言うのに何のペナルティかと訴えたくなる。
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