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約束の刻を告げる放課後のチャイムが鳴り響いた｡
夕暮れの校舎､グラウンドからは今年も高体連で初戦敗退するであろう野球部の掛け声が響いている｡
残念ながら練習試合ですらホームラン１つ打てない彼らと違って､俺に奇跡が起きようとしていた｡
きっかけは､可愛らしいくまさんのシールで封をされた手紙が､俺の靴箱にお邪魔していた事｡ 気だるい朝のテンションが粉微塵に吹き飛ばされた｡
周囲を何回も確かめて､虎ばさみの類が無いかを確認｡ 安全だと解って音速を超えるであろう速度で手紙を懐にしまい込んだのが懐かしい｡
そのままトイレへ｡ 勿論ここでも罠や尾行される恐れがあったので､朝一番に誰も使う筈がない体育館裏のトイレに入った俺の慎重さ､きっと前世は名のあるスパイだったのだろう｡
『放課後､２年３組の教室で待っていてください』
丸っこい文字で書かれた秘め事への招待状｡ 書いた子の名前は無かったが､読んだ直後､興奮のあまりにガツンガツンと個室の壁に頭突きをしてしまった｡ それも今や良い思い出だ｡ いつの日か人生に置いて隣を歩く人と共に穴の開いてしまった壁を見て笑い合いたいと思う｡
そして放課後まで､頭痛によって保健室で寝て過ごした｡ 俺だって馬鹿じゃない｡ 自分が浮かれている事くらい理解している｡ 下手を打ってクラスメート､特に男子諸君への機密漏洩なんてした日にはどうなるか｡ それこそ戦争だ｡ １対多では虐殺にしかならない事を彼等は理解してくれない｡
放課後直前｡ 野球部からこっそり拝借した金属バットは､万が一､これが大規模なドッキリだった時は……いや､これ以上はよそう｡
｢お待たせしました……｣
幸せはすぐ傍までやって来ているのだから……
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