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脳みそのシワが野球の硬式ボールの縫い目くらいしかない野球部は放っておいて、俺と十六夜さんはお互いの教室へ……
俺は三組、十六夜さんは四組。
なぜだ……!!
なぜ俺達は違うクラスなんだ……!!
分厚いアスファルトだかセメントだか鉄筋コンクリートだか知らないが、俺と彼女を隔てるこの壁さえなければ……
「いっそのこと……ぶち抜くか」
「何をぶち抜くんですか?」
呟きをリツイートしたのは、もちろん十六夜さん。 学生カバンを両手に持って小首を傾げる姿はすぐに脳内HDに保存した。
可能ならば彼女の人生をフォローしたいものだ。 フォローしたいものだ、人生まるごと。
「なんでもないよ。 ただ、その……なんていうか、今更十六夜さんと違うクラスでちょっと残念だなぁ……なんて……」
羞恥半分、照れくささ半分。 思わず視線を逸らしてしまった言葉、直後に頬が熱を上げる……!! くそっ、もっとナチュラルに言えよ俺……
「わたしも春日君と一緒のクラスだったらいいなって思いますよ?」
「え……?」
それって……
思わず戻した視線の先、柔らかな笑みを浮かべる十六夜さんに心臓が打ち抜かれた。
微かに頬に朱が差しているように見える彼女から目が離せない。 朝の喧騒がどこか遠くに聞こえるなかで、十六夜さんは桜色のぷるんとした唇をそっと開く……
「だって、その方がツンデレの事をたくさん教えてもらえそうじゃないですか?」
……うん、なんか残念だけど。
……ですよねー。
「それじゃ春日君っ。 またお昼にねっ」
「あぁ、うん……」
にっこり笑顔で手を振る十六夜さんに、俺も手を振り返して見送る。
なんか、不完全燃焼です、今の俺。
ツンデレっぽくない別れの言葉へのツッコミを忘れた事に気付いたけど……まぁ、いいか。
意気消沈しつつ、俺も自分の教室のドアをガラリと開けて――
目の前にマルコメ坊主がいた。
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