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恋愛に不慣れなあたし、塚田夕日はまんまと神様がありがた迷惑に拵えてくださった“蜘蛛の巣”に引っかかってしまいました。
そんなに世の中アマくないんです。
「あたしの好きな人?……んっとねぇ」
「“あの人”?」
「分かってんじゃん」
そんな会話を帰りのバスを待ちながらわいわいしたのはいつだっただろう。
あたしと辰也と同じ1年の町田君は部活の後、バスを待ちながら恋話をしていた。
「だからあの人って誰だよ?」
「あの人はあの人だよぉ。あぁ会いたいなぁ」
やたら食らいついてくる辰也にあたしはさらっと返した。会いたいなんて大嘘。だって目の前にいるし。
「だから誰だよ!」
「だからあの人だってばぁ」
くだらない応酬を横で時々突っ込みながら町田君が笑って聞いていた。
そばの電柱の周りをぐるぐる回りながら同じ会話がいつまでも続いた。くだらないのは重々承知してた。でもそれが楽しかった。
ちょっと前まで。
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