はじまり

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初めて郁也くんを意識したのは、2年のクラス替え。 つまり、今年に入ってから。 菜花とは、双子という理由からなのか、同じクラスになったことがない。 クラス替えをした時に、クラスメイトにまず最初に言われる言葉。 ――『君、どっち?』 出来れば、クラス名簿を見てから話し掛けてほしい。 出席番号順で、隣になった男子。 この人だって、そうでしょ? 今回もそれを疑わなかった。 なのに。 「立夏ちゃんって、姉ちゃんの方?」 郁也くんは、そう言った。 あたしのこと、“立夏”って。 聞かなかった。「どっち?」って。 おそらくは、名簿を見ただけだったと思う。 だけど、嬉しかった。 すごく嬉しかった。 たった、それだけ。
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