最弱の偏見

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左目を潰された巨大鰐亀がその怒り狂った右目でこちらを睨みつける………。 「ゴォヴアァァァア!?」 いきなり巨大鰐亀は左目の出血すら厭わず慌てた様子で俺から全力で離れて行った。 「なんだってんだ……?」 口から漏れた呟きはディスペンサに来た直後とは比べ物にならないほどかすれきっていた。 「ゴホッ、とりあえず……ここから早く脱出……だな。」 俺は一度那韻をカードに戻し、災害の谷を後にした。 災害の谷を抜けたからかいくぶんか症状は引いたものの、未だダメージの残る体を引きずりながら最初の場所にたどり着く。 そして背負った姿凉雪を地面に横たえる。 「ここまでしたんだ……ちゃんと発動してくれよ?」 そして文字通り血の吐く思いで作りあげた【慈悲深き女神の落涙】を発動する。 すると凉雪が柔らかな光に包まれ、光収まると穏やかな顔で眠る凉雪の姿が。 「良かった……。」 ちゃんと成功したみたいだ。 「次は那韻だ。」 「キュキュー……。」 生後間もないうちにあんな相手を相手に戦ったんだ、その消耗は激しいだろうから同じく【慈悲深き女神の落涙】を使ってやる。 「キュ、キュッキュキュー!!!」 那韻、復活ってか? 「ははは……。」 そこで俺の意識は途絶えた。
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