最弱の偏見

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俺はカードケースから白紙のカードを取り出して凉雪に差し出す。 「多分それに触れれば「えい!」人の話聞こうか?」 差し出した瞬間にカードに触れた凉雪を光が包み込む。 そして光が収まったその場所に凉雪の姿は消え、カードには【白狐少女凉雪】の文字と凉雪の姿が。 あの寿限無並みに長い名前ではないのだなと他人事のように思ったり。 とりあえず凉雪をカードから出して、 「これからよろしくな?」 「うんー!」 満面の笑みで抱きついて来る凉雪。 「っと、そろそろ時間か?那韻!」 「キュー!」 那韻が頭に乗った瞬間、最初にここに来た時と同じく視界が光に包まれた……。 その者は災害の谷のさらに奥底で命知らずの客人のことを考えていた。 「あぁ……ようやく、ようやく来たのか。」 その者は歓喜に打ち震えていた。 この場所に逃げ込み、隠れながら生き続けて何年、いや何世紀の時を経たのか、それはその者自身も分からなかったが、その者にとっては客人と【初めて】出会ってから今までが一番永く感じられていた。 「全く……何の備えもなしにここに踏み込むなど……あの時と全く変わってないな。」 その者は客人の幼き姿を思い出し、そして時を経た今の姿を想像して笑みを浮かべる。
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